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白い巨塔

フジの再放送「白い巨塔」が、明日で最終回です。2003年版の財前は、肺癌そして脳転移という悲惨的な末路をたどります。東教授の執刀のもと行われるオペで、もはや手遅れな状態の癌に手術は早々に終えられます。田宮二郎さんのバージョンでは、そのとき、東教授が「時計…」という一言で、時計の針が進められます。財前の、麻酔の中の薄れた意識でその進められた時計を観るシーンが印象的でした。
しかし、今回の唐沢寿明さんのバージョンでは、手術の所要時間は、担当医の柳原から訊いて知ります。もちろん、偽りのものです。シルクのパジャマを着た財前が自分の病状に不審を持つのは、術後の措置により受ける抗がん剤治療からとなります。脳転移した財前の身体は、右手の麻痺が起きており、自分の意思に反してペーパーナイフを落とします。
「財前、君の診断は的確だったよ」里見は、財前に告知します。

財前:「余命はどれくらいと読む」
里見:「長くて三カ月だろう」
財前:「ボクの診断と同じだよ」「三カ月か、最高裁に上告しても判決を見届けるのは不可能だな」(少し間をおいて息を吐きながら笑う財前)
財前:「ボクは負けた訳か」(咽こむ財前)

里見:「ウチの病院に来ないか」「オレが担当させてもらうよ」「キミが望む治療を行う」
財前:「有難う、里見、嬉しいよ」「だが、それは無理な相談だな、大学病院の人間は大学病院の中でしか死ねないんだ」

里見:「財前、(少しためて)なぜ、諦めるんだ」「どんな時でも決して諦めず戦ってきたキミじゃないか」「自分が望む治療を自分で選ぶべきだろう」
財前:「どうしたんだ里見、死を前にした患者を相手に声を荒げたりして」「いつも穏やかなキミらしくないぞ」
里見:「キミを助けたいんだ」
財前:「ボクは助からんよ」
里見:(言葉をさえぎるように)「オレはキミを助けたいんだ」「それが無理ならせめてキミの不安を受け止めたいんだ」(間をおいて)「オレが受け止めたいんだ」

財前:「里見、ボクに不安はないよ」「ただ」(一拍置くと感極まって声を詰まらせる、ハーと息を吐き、気持ちを整えながら)「すまん」「ただ、無念だ」

このドラマ、対比関係が見事です。
愛人花森ケイコと妻、里見と財前、東と財前、柳原と財前。
田宮二郎バージョンでは、愛人のケイコは、財前の一番逢いたかった母に逢わせようとします。唐沢寿明バージョンでは、妻が財前の余命を鵜飼夫人の一言から察し、愛人をひき合わせます。前にも書きましたが、田宮二郎バージョンは、財前の母への思いが、いつも話のバックにありますから、ケイコへの思いも母に対するものに通じているように感じられます。
柳原と財前という対比は、同じような境遇にある二人ですが、その野心から財前は権威へ執着します。柳原は里見に近い考えで、財前のことを尊敬しながらも良心の呵責で悩みます。

この最終回の後、この2003年版ではその後の柳原と里見を主人公に、総集編が組まれました。「初めての告知」という回です。

浪速大学には、高度がん医療センターが創設されていましたが、里見が千成病院にいます。財前の遺言「里見、これからの癌治療の飛躍は手術以外の治療法の発展にかかっている。ボクはキミがその一翼を担える数少ない医師であると信じている。能力を持った者にはそれを正しく行使する責務がある。キミには癌治療の発展に挑んでもらいたい。」を読んで里見が下した結論のようです。
里見は、最先端を敢えて選択しませんでした。
里見:「オレは最初から最後まで患者を看たい」、「オレは途中で患者と別れたくないんだよ」

柳原は、金井と共に外科医局に残っています。佃と安西は、地方に飛ばされています。
この回において、柳原は末期の癌患者(5年前に財前に手術をしてもらい、定期健診をしていたが、再発して手の施しようのない状態に陥っていた)に対して初めての告知をします。患者への告知に悩む柳原は、悩んだ挙句、患者の斉藤たかよに、再発を告げます。指導医として付き添っていた金井が、抗がん剤と放射線による延命治療か、痛みなどの苦痛を抑える緩和ケアにするかの選択を促します。
「選べない、怖い」と泣きだした患者に対し、柳原は患者の気持ちを受け止める選択をします。

これが柳原なりに出した、結論でした。

by sumomojam39 | 2009-11-25 18:02 | テレビネタ