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SONGWRITERS

佐野元春さんがホスト役で日本国内の優れたソングライターを招いて、「歌詞」すなわち音楽における言葉をテーマに探求していく番組と紹介されています。
2回構成で、一人のアーティストを紹介しています。
7月から始まったこの番組は、これまで小田和正さん、さだまさしさんを迎え、4回の放送を終えました。
放送している時間帯は、NHK教育TVで土曜の夜11時25分~11時55分。再放送が、同じくNHK教育TVにて翌週の土曜正午から12時25分で放映されています。
BS2でも放送しているようです。

会場が佐野さんの母校、立教大学の池袋キャンパスで、あちこちの大学生が聴講しています。

●ソングライター=現代の詩人
●ポップソングは時代の表現であり時代を超えたポエトリー

つたない文章で恐縮ですが、名刺代わりに、小田和正さんの回だけ、ダイジェストで番組の紹介を書きます。

第1回の小田和正さんの回での展開は、まず小田さんの経歴紹介で始まりました。ご存知の人が多いと思いますが、小田さんの前身は、OFF COURSE(オフコース)というグループです。最初は鈴木康広さんと二人、そして後から三人が追加になり、のちに鈴木さんが去ります。
オフコース解散後、ソロになり、あのトレンディードラマの東京ラブストーリーの主題歌「ラブストーリーは突然に」などのヒットを連発します。

佐野さんは、小田さんの東北大学建築科という経歴から、音楽作りとの共通点をお尋ねします。小田さんはその回答として、建築も音楽も何もないところから作るという共通点をあげ、そして最終的にリテールを決めて行かないといけないという点でも共通していると答えました。
具体的に言うと、音楽の場合、サビに展開していくにあたって、サビまでの部分を段々と盛り上げていかなといけない。サビは最後に考えればいいやと放置しておくことが多かった。
建築の課題で、トイレと階段は必ず作らなきゃいけないが、階段とかは面倒くさい。そこで階段とかを最期に考えて書こう。
これが、歌作りと似ていた。

学生時代の大学紛争の頃の最初の歌作りの苦労を尋ねた。最初、オリジナルを書こうとして1フレーズはできたが、その先が全然浮かばなかった。
意外だったのは、歌いたいことがなかったという言葉。
意識にあったのは、同級生が聴いたらどう思うだろうかということ。
自分の書いたもので評価を受けるのをテーマとした。

番組は、ここで佐野さんが選んだ小田さんの歌詞で気に入ったものの、リーディングに展開する。歌詞を佐野さんが読むのだ。ただ、詩だけを。
選曲された歌詞は、「the flag」(個人主義に収められている)
佐野さんは、読んでいくのだが、定期的にわざと胸のマイクの当たりをたたく。
これブレスでもなく、だけど、フレーズとして聴くのに適当な場所なのだ。
読み終えたところで、小田さんが感想を述べた。

人の詩みたいな、ちょっと自分が書いたって感じがしなかった。不思議なもので。僕が読まないで良かったと思って…。

佐野さんが、この作業の趣旨を述べられた。
言葉には音楽が付いているので、音楽と言葉を切り離し、第三者が詩だけを切り取って、作者に聴かせる。これは勇気がいることだった。作者に叱られるんじゃないかって。

小田さんは、「素晴らしかった」と絶賛されました。そして少し笑いを入れて、素晴らしいっていうのはてめえの詩が素晴らしいみたいで横柄だけれど…。

Q,ソングライターを志したきっかけは?
A,音楽が好きだった=音楽を自分が書くとは思っていなかった

Q,影響を受けたソングライターは?
A,絞れない。全てだと思う。
世代的には、ビートルズとか、と切り出したが、古典のようなもの、時代のグルーブに乗って集約された傑作と感じる。何度ももういいかって思うのだけれど、また戻ってくるみたいなもの。

Q,デビューのシングルについて
A,ヒットはしなかった。書いていた日記をヒントに書いた。
その後同じように日記を読み返したが、以降は作れなかった。

Q,好きな言葉
A,やってみようぜ。

Q,歌詞の中で使ってしまう言葉
A,風。風は好きなんだ。また風かよって思われても、全部風でもいいくらい好き

Q,好きな映画は
A,ローマの休日(1953)、ヘップバーンが大好き。

Q,他にやってみたい職業
A,野球。ジャイアンツのファン。足も速くないし、遠投も大したことないし。
でも挫折した一番の理由は、公式の野球部がなかったこと。

Q,絶対にやりたくない職業
A,締切が嫌いなので、連載を抱えている漫画家。
でも、締切や約束は守るらしい。

佐野さんは、守れない人らしい。締切はプレッシャー以外の何物でもなくて…。だけど、自分の気に食わないものをアルバムには入れて来なかったらしい。小田さんはエライって言ってました。

Q,死ぬ前に愛する人に残す言葉
A,もう近いねって軽く笑いを取りながら、やっぱり「ありがとう」でしょ。

Q,誰のために曲を書いているのか
A,人のためにはあまり書かない。だけどタイアップの相手の思いには応えたい方。歌が自分だから、商業性に浸食されたものは歌っていて気持ちよくないと思う。作家性としては、自分が素直に歌えるまでにはたどり着きたいと思う。

次に取り上げたのは、「生まれ来る子供たちのために」
前のシングル「さよなら」についての一言があった。
実は、「さよなら」については、小田さん的にはあまり評価していないということを訊いたことがあった。その表現を的確に表していたのは「売れすぎた」
番組では、別に否定はしないんだけど、自分が作ったのにいつまでも他人の顔をしているような、なんか商業的なこう歌ったら喜ぶのかなっていう、もちろん歌っていて不快なものではないのだけれど、自分との距離がある歌。だけど最初にヒットしたシングルだった。

商業ベースのレコード会社には理解してもらえない発想だけれど、俺は理屈っぽいから、みんなが聴いてくれるときに、問題提起として書いた歌だった。それこそ、同世代に聴いてもらえるような。
若い時は日本を本気で好きになりたいって思っている。この先いつまでもこんなんじゃしょうがないってそんなメッセージを込めている。

ここまでで、第一回は終了しました。

Q,ソングライティングの方法論
A,曲が先なのか詩が先なのかについて、ほとんど(9割9分)メロディが先。詩を先に書くと詩に当てはまるメロディはなかなかあいまいで見つけにくい。メロディを犠牲(二の次)にするのが不快なんだ。

メロディと字数が合うとしても、俺は懐疑的だから、説得力がどこまであるかをいつまでも考える。
「さよなら」は、最初、さよならする歌じゃなくて段々近づいていく歌だった。レコーディングするときにさよならとリフレインするのに何か感じて全部の歌詞を書き直した。唯一あの曲だけだけれど。
詩は試行錯誤して書く方、諦めないでもっといいものはないかと考え続ける。

「言葉にできない」メンバ五人による最後のアルバムoverより
この詩を小田さんに手書きしていただき、みんなに見せてもらいたい。

ソングライターの小田さんの直筆を見たことがないみんなに見せたい。この企画は、かつて、財津和夫さん、松任谷由実さんと三人で「今だから」(1985)という作品を手がけた際に、お互いの字を初めて見た。それぞれその字でみんな詩を書いてきたんだなって感慨があったエピソードを披露。

この曲は、もう解散することが決まってて、そのコンサートの最期に歌うことになるという前提の重みのある曲が欲しかった。
詩を書くのが基本的に嫌だった。そこで詩を書かずに済ませる方法のスキャットでみんなに想像して欲しかった。人間の感情として、悲しいこと悔しいこと嬉しいことが想像させやすい。最期に嬉しくてが来ると発想できた時に、これはみんなに届くなって感じたそうだ。

学生からの質問に対する回答

初めて曲を作った時の話は、8小節の曲を書くという機会に、自信のあった作品を披露した。しかし、先生はさらりと弾いて、感想を一切言わなかった。後から考えると自分の作品はつまらなくまとまっていたのかも知れない。でもその時はショックで、先生にそのときの感想が訊けなかった。

曲を埋める時の苦労について、ずっと考えて埋まらない場合は、最初から書き直す。でもできるだけ考えて埋める努力をする。

影響を受けた本としては、藤沢周平さんの時代小説、夏目漱石も好きだった。

ライブをやって解ることがいっぱいある。時にはアレンジを変更したりもする。この曲はこうして歌うんだなって、確認させられたこともある。

音楽をやって世界を変えることはあると思う。少なくとも文化を変えることはあると思う。例えばビートルズなんかは変えたんじゃないかな。

歌詞を書くのは辛くても歌うのは好きだ。そして、曲には歌が付いているものだという認識を持っていた。だから、詩を書く作業は辛くてもやる。一生懸命書いてみんなが喜んでくれたりするのが嬉しいし、歌う以上は自分が素直に一生懸命歌える言葉にしたいっていう思いもある。だからそれを一生懸命に探して書く。

詩を書くのが苦にならない佐野さんのことを、アーティストだという表現をされていた。
僕は便宜的にアーティストだからとも。

曲作りで一番大切に思っていることは、自分が受け入れるかどうか。自分が気に入ればそれが強い、納得できるか、それしかないと思う。

この番組は、すごく中身の濃い話をしてくれる。
小田さんの本音、結構番組内で正直な表現で、一生懸命という言葉が繰り返されていたように感じた。佐野さんや当日参加された学生たちの核心をついた質問にも、真摯に回答していた。

過去に小田さんのソロになってからのコンサートに二回ほど行ったことがありますが、小田さんは、すごく自然体で、照れ屋で、だけれども素直で正直な表現者だと思う。そんな魅力を佐野さんがうまく引き出してくれていた。

また、佐野元春さんのコンサートにも、まだ約束の橋という歌がヒットしていた頃、観に行った覚えがあります。アルバムで一番好きなのは、Cafe Bohemiaです。元春さんには、いつまでも若者のよき理解者という印象があります。
今後も、多くのミュージシャンと我々の橋渡しをして欲しいと思います。

お二人目は、さだまさしさんでした。
三人目は、松本隆さん、そして四人目にはスガシカオさんが予定されています。

by sumomojam39 | 2009-08-05 02:19 | テレビネタ