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釣り

子供の頃、遊びの中に釣りがあった。
とはいっても、釣れた経験は少ない。
クチボソと呼ばれるものやアメリカザリガニと、いかにも小学生の釣り。
アメリカザリガニは、竿は手製で、最初の一匹を穴に手を入れて釣ったら、それの殻をむいて、腹の身を出す。
それを餌に次のを釣るのだ。
ザリガニは、いわゆる共食い状態なわけで、これが一番の獲物なのだ。

クチボソは、親にせがんで買ったヘラブナ釣り用の竿を使って、まぐれで釣ったもの。
後にも先にも、この竿で釣ったのはそれだけ。
それからしばらくは、釣りはご無沙汰だった。

そんなある日、弟が釣りにかかわる仕事に就いた。
弟が釣りをしたのは見たことがなかったし、興味もなさげだった。
就職先が、たまたま釣り雑誌の会社だったのだ。

この会社、当時、弟も経理をしていたが、いわゆる助手のような状態で入社した。
そこの上司が、男性、年配の方だったそうだが、結構厄介な性格で、それまで何人も辞めていたそうだ。
弟は、したことがない釣りを必要に迫られ覚えた。
アユの友釣り、カワハギ釣りなど。
その都度、ハリや重りを、釣具店で購入してきて仕掛け作りに精を出した。
その会社で出している書籍を購入し、DVDを観て、仕掛け作りや釣り方の勉強をした。

釣りの醍醐味は、釣った獲物の料理であると言って、カワハギなどワタを醤油に溶いて、つけて食べてなどと、家族に振る舞った。
正直なところ、弟がさばいた魚を刺身で食べるのには、多少、抵抗があったが、彼の努力を考えて、家族で褒めながら食べた。
弟は、酒も嫌いではないので、上司の家に誘われて飲んだり、朝早い時でも、上司の家に迎えに行って、接待の釣りにも行った。

そんなけなげな弟が、ある日、夜中に電話をよこした。
会話の中で、どうやら上司にねちねちと言われたらしく、自己嫌悪になって、電車にも乗らずに、家へ向かって歩いている様子だった。
そんなことが、何回か繰り返された。

上司は、酒を飲むと、酒癖で、愚痴ったり、嫌なことを言う性質らしく、弟は次第にウツになってきた。
こんな飲み方をしていれば、段々と酒を飲むことも嫌になってくるし、プライベートまで上司といるのは、つらくなってくる。
それを我慢し続ければ、本当にどツボにハマり、陰険な性格がうつってしまう。

弟のそんな様子を家族みんなが心配していたところ、ついに辞める決心をした。
その会社を辞めると、それっきり釣りも辞め、まったく竿を触ることもなくなった。
それまで、土日の釣り番組を観たりしていたが、それさえも観なくなった。
本当に会社に勤めたからだけで、釣りをしていたのだ。

私は、そんな嫌な経験はないので、今でも、NHKの「にっぽん釣りの旅」を観ています。
今朝も俳優の津田寛治さんが奥伊勢の清流宮川でウナギ釣りにチャレンジしていました。
彼曰く、天然ウナギは、歯ごたえが違うとおっしゃっていました。
そんな彼の意見に、蒸してないじゃんと思ってしまった私でした。

by sumomojam39 | 2009-06-09 13:10